立ち読みコーナー 『サッと作れる零細企業の就業規則』
<第1章>10人未満の会社 就業規則は業務マニュアルとしても活用できるか?
- 小さな、零細な会社にこそ就業規則は必要
- 作らないと、労使トラブルでは負けます
- 就業規則はこの際業務マニュアルとしても活用する
作らないと、労使トラブルでは負けます
従業員から解雇無効で裁判になったら、社長さん、あなたならどうしますか?訴状を見て知り合いの弁護士に相談なさり、弁護士に裁判をお願いすることになってくると思います。ご存知のように日本の裁判は時間がかかります。
長ければ2年近くかかります。毎月1回は裁判所に行かなければ弁護士に代理で行ってもらうことになると思います。
弁護士は「あなたの会社はこの手の裁判では大変重要視される就業規則が作成されておりません。残念ながら、社長に大変不利な状況であります」と言われると思います。このとき就業規則を作成しておけばよかったと言ってもそれは後の祭りです。
国家に憲法があるように、会社の規模は小さくても会社のルールを就業規則として明確にしておかなかったことは、明らかに社長として経営の失敗であります。国に法律がなければ、その案件に対して対応ができません。会社も同じことが言えます。おそらく裁判では、就業規則に解雇が明示されていないということで、今回の解雇は権利の濫用ということで、解雇はできないということになると思います。
しかしながら、人間関係の視点からも職場復帰は難しいということで、解決金として5カ月分ほど要求されてもおかしくないと思われます。それと弁護士の費用が40万円ほどかかるのではないかと思います。結果的に給与が約30万円の労働者であれば、約190万円程経費がかかってしまうこともあります。
このようなことは、社長さん、あなたの会社でも起こりうることなのです。いかがですか?
解雇は、判断を誤ると多大な「経費」と、裁判による売上に関係ない社長さんの大事な「時間」を失うことになります。10人未満だから、就業規則を作らなくていいと思っていると、思わぬ落とし穴に落ちることがあります。
いかがですか。土日も働き続けながら、190万も支払うことになれば、何のために従業員を雇ってきたか意味がありません。190万稼ぐには売上で、約2000万近い売り上げに匹敵すると思います。私はこうした出来事を「労務災害」とよんでおります。
人生にもいろいろな出来事があります。私は32才の時に胃がんと2年前には肺がんを宣告されましたが、奇跡的に現在も生きております。病気してみて初めて健康のありがたさがわかりました。毎日病室から眺める、外で元気に歩いている人をみて、「なんて幸福な人達なんだろうか?自分もあの人たちのように白いご飯をいっぱい食べたいな」なんてしみじみ思ったものです。
会社経営も同じで、こうした労務災害を通して従業員のことが一番理解できてくるのではないかと思っております。
やはり、従業員は物じゃなくて生身の人間であるということを、経営者はもっともっと考えなければならないと思います。
いずれにしても、現在の日本では、解雇の争いについて会社側は、明確かつ相当な理由がなければ負けているのが現状です。一度インターネットで解雇の最高裁の判例を見ていただけたら十分ご理解いただけると思います。今回の事例の案件は基本的に就業規則に解雇の具体的な事由に関して記載して作成して、周知されておれば(これが非常に大切な点)、かなり違った結果になってくると思います。
私はこれからの中小企業の経営者は、持論でありますが、3級程度の簿記と労務管理ということで、労働基準法を少し勉強されて事業を始めるべきだと思います。経営者にとって売上を上げていくこは、もっとも重要な事でありますが、経営も人間の体と同じように、手や足、等があって活きるものです。売上が経営の7割のウエイトを占めると思いますが、経理・労務を軽視すると会社は病気になります。その為、我々社会保険労務士や税理士の方の商売が成立するのかもしれません。