立ち読みコーナー 『サッと作れる零細企業の就業規則』
プロローグ
ある会社の社長が問題のある社員に解雇予告をして、1ヶ月後にやめてもらおうとしました。
ところが、社員が、1人でも加入できる労働組合に加入したため、その組合から団体交渉の申し入れがありました。その最初の団体交渉のときの、組合からの質問は、以下の通りです。
「解雇であれば、就業規則を見せていただけませんか?」
「・・・・・・・」 社長は思わず黙りこんだ
残念ながら会社は10人未満であったため、就業規則を作成しておりません。法律の改正があり、解雇するときは、就業規則等で具体的な事由がなければ、解雇することは大変難しい時代になってきました。社員と争いがなければ問題はありませんが、いざ訴訟となれば会社側は権利の濫用ということで解雇は無効となってしまうケースも予想されます。
今回の事例では社長はやむなく組合の主張をのんで解雇を取り消すことになってしまいました。
ある会社では退職した社員から、未払い残業代として過去2年分で約200万請求されました。結局、この会社は約半分の100万支払うことで、解決しました。最近多くみられる事例です。
これも就業規則の賃金規定の定めをしっかりしておけば、支払わなくてもよかったかもしれないケースです。このように近年労働基準法を逆手にとり重箱を叩くように、会社を相手に訴えてくるケースが増加中です。これからは、労務問題の解決金の支払いのための倒産ということも考えられる時代になってきたといえます。
「10人未満だから就業規則は作成していませんでした。」と、主張してもいざ争いがあれば、労働基準法には抵触しなくても、民事上では会社は非常に辛い立場になってくることは明らかです。
私は、平成13年に大手生命保険会社を早期定年「45歳」で退職し、すぐその4月に社会保険労務士として独立開業して本年で10周年を迎えました。金沢で開業してますので、そのほとんどの顧問先は中小零細企業です。開業時より就業規則の制度設計や改定は日常的にこなしております。
従業員10人以上は労働基準監督署への届け出の義務があるため、就業規則については、ある程度認識されているように思います。しかしながら、従業員2・3名から10人未満の零細企業では、届け出義務がないことと、家族的経営でやってきているなどの点で、就業規則の必要性を理解している社長は極めて少ないように思います。
仮に作るとしても、従業員約20名以上の会社が作成するような、書店であるような本のサンプル条文がはたして必要であるのかと、開業以来疑問を持ち続けてきました。仮に、従業員2・3名の会社に100条前後の規則が現実の問題として必要でしょうか?目の前にいつも社員がいるのですから、直接話をすればいいだけのことです。膨大な条文など従業員が読むわけがありません。読むとすれば、有給休暇か賃金のところかと思います。
ランチェスター経営で有名な竹田陽一先生も主張されておりますが、零細企業は、賃金や、規則はシンプルにするべきだとお話されております。10年間就業規則を作成してきて、従業員2・3名程度の会社は、就業規則はシンプルがベストであると確信しています。
そこで、「伝説の就業規則」ということで、零細企業および小さな会社の社長さんが、本書を読んでいただければ、わずか1時間ほどで作成できる就業規則とその作り方を公表したいと思います。
このような従業員2・3名程度を対象にした就業規則の本は今までは何故か出版されていません。なぜなら、あまりにシンプルであると、専門家の商売に結びつきにくくなると、専門家が考えてのことかと推測しています。
この点、私は逆の考えでいます。零細企業向けの規則を周知することで、世の中の零細企業小企業の社長さん方がもっと就業規則というものを意識する。それで専門家の必要性はますます高まるのではないかと。
また、この規則の中に会社の経営理念や業務マニュアルを導入していただければ、会社経営においても十分活用できるものになると確信しております。
零細企業や小さな会社の社長様にとって、今後発生すると予想される、不毛な労務トラブルから、会社を守り、また、経営のリスク対策の一助になれば幸いです。