就業規則と判例<6>
日々現場で起きている問題に、裁判所がどのような判断を下しているかを学びましょう。
【就業規則の変更による労働条件不利益変更】肯定事例
第一小型ハイヤー事件
(最高裁 平成4.7.13)
概要
タクシー運賃値上の認可を機会に、使用者が従業員(乗務員)との合意のないまま、乗務員の歩合給の計算方法を定める就業規則を変更した。
判決
労働条件を不利益に変更する就業規則条項が合理的なものであるとは、当該就業規則の作成または変更が、その必要性および内容の両面から見て、それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても、なお当該労使関係における当該条項の法的規範性を是認できるだけの合理性を有するものであることをいうと解される、と判示した。
その上で、「本件就業規則の変更の必要性」は認めたが、「本件就業規則の変更の内容の合理性の有無」については、新計算方法に基づき支給された賃金額と旧計算方式に基づき支給されていた賃金額とを対応して比較し、その結果前者が後者より全体として減少していないかを確定することが必要であること、これが減少していない場合には、それが変更後の労働強化によるものではないか、また、新計算方法における足切額の増加と支給率の減少がこれまでの計算方法の例と比較し、急激かつ大幅な労働条件の低下であって従業員に不測の損害を被らせるものではないかをも確認すべきであること、新計算方法を採用した理由は何か、会社と新労組との間の団体交渉の経緯はどうかなども確定する必要があること等を指摘し、本件を原審に差戻した。
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