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浪速学院:未払い残業代、9割放棄 労基署調査後、教職員に異例要請
私立「浪速高校・関西大学連携浪速中学校」(大阪市住吉区)を経営する学校法人「浪速学院」(住吉区、当時は大阪国学院)が08年9月、未払いだった過去2年半の時間外手当のうち10%だけを支払い、残額を放棄することで教職員側と合意していたことが分かった。毎日新聞が入手した文書などによると、「年間1000万円以上の手当発生が見込まれ、財政負担に耐えられない」と教職員に理由を説明しているが、学校法人で経営者側が労働者側に残業代の未払い分の放棄を求めるのは異例。【林田七恵、日野行介】
関係者によると、大阪南労働基準監督署が08年春、浪速学院を立ち入り調査、06年4月~08年8月分の多額の時間外手当の未払いを把握した。内部からの申告があったとみられる。
木村智彦理事長(兼校長)は全教職員のうち、未払い分があった約90人の教職員に「お金がない。経営に協力してほしい」と要請。未払い分のうち、10%を支払い、残りは債権放棄に合意する書面に押印するよう求めた。未払い額は多い教員で150万円以上といい、放棄の総額について浪速学院は「約2500万円」としている。
◇拒否教員「降格」
毎日新聞の取材に、ある教員は合意した理由を「木村理事長からの圧力があり、やむを得なかった」と説明した。また、放棄を拒否したという男性教員1人は「全額が支払われたが、学年主任から降格になった」と話している。
労働基準法は時間外労働について、通常の1時間当たり賃金に25%以上50%以下を割り増しするよう規定。大阪労働局は「一般論として、刑事処分の対象ではないが、正しい方法と言えない。合意しないことを理由に降格したのなら、一方的な労働条件の不利益変更で労働契約法違反」と指摘している。
毎日新聞の取材に、浪速学院側は「一定割合について債権放棄を依頼したが、同意を得た教職員に対してのみだ。該当する教職員には特別賞与などを支払っている」とし、降格されたとの教員の主張には「本人の同意によるものであり、債権放棄とは関係ない」と文書で回答した。
浪速学院は09年6月、関西大と職員交流に関する連携協定を締結。関係者やホームページによると、今回の問題対応中は連携に向けて協議中だったが、未払い分の放棄については関大側に報告していなかった。
◇理事長高報酬、補助金カット
浪速学院の木村智彦理事長(65)は2300万円以上の年収を受け取っていた。それを理由に同学院は大阪府から年間700万円以上の補助金(私学助成)を削減された。教職員の一部からは「我々は時間外手当が削られ、年収が下がった。自分ばかり高額をもらって許せない」との声も上がっている。
府は09年度から、私立高校を運営する学校法人で、1600万円を超える役員報酬を与えていた場合、超過分を私学助成から減額。府への情報公開請求で開示された資料などによると、同学院に対する私学助成は09年度約740万円、10年度約780万円減額されている。同学院で役員報酬を受けているのは木村理事長だけだった。
浪速学院側は「報酬は理事会で決定したもの。10年度分から大幅に削減している」と説明している。
木村理事長は06年12月、浪速学院の理事長に就任、07年4月から浪速高校・関西大学連携浪速中学校の校長も兼務している。02年4月、関西の公立高校で初の民間人校長として大阪府立高津高校の校長に就任したが、教職員らが「怒鳴られてうつ状態に追い込まれた」などとして人権救済を申し立て。06年3月に辞職した。
[毎日新聞社 2011年12月13日(火)]